ISMRM 2026参加報告: 脳エネルギー代謝イメージングの今後

2026年5月、南アフリカ・ケープタウンで開催されたInternational Society for Magnetic Resonance in Medicine(ISMRM)Annual Meetingに参加しました。本学会では、超偏極MRI、MRSI、PETを含む脳エネルギー代謝イメージングの今後について、多くの重要な議論が行われました。

今年特に印象的であったのは、超偏極MRI分野における「pyruvate依存」についての議論です。Hyperpolarization Study Groupのパネルディスカッション “Has the field become too dependent on pyruvate?” では、Dr. Martin GrasheiとDr. Andrea Capozziの司会のもと、Dr. Kayvan Keshari、Dr. Renuka Sriramとともにパネリストとして登壇する機会をいただきました。本セッションでは、超偏極[1-13C]pyruvateが現在の分野を牽引してきた意義を確認するとともに、今後の新規プローブ開発、疾患応用、そして臨床実装に向けた課題について活発な議論が行われました。

HP-MR study GroupでのPanel discussion

私自身は、この議論をFDG-PETの発展過程と重ね合わせながら考えていました。PETでは多くの新規トレーサーが開発されてきましたが、真に広く普及したのはFDGでした。その背景には、技術的な完成度だけでなく、「どの臨床課題に対して、どのような価値を提供できるか」が明確であったことが大きいと考えています。超偏極MRIにおいても、単なる技術開発にとどまらず、臨床的なキラーアプリケーションを育てていく視点が今後ますます重要になると感じました。

また、今回の学会では、覚醒マウスを用いたUV-induced hyperpolarizationによるin vivo 13C-MRIに関するポスター発表も行いました。超偏極技術の新しい展開として、今後の脳代謝研究への応用が期待されます。

今回のISMRMでは、Polarize、GE HealthCare、NVision Imaging Technologiesなど、超偏極MRIや脳代謝イメージングに関わる国際的な企業・研究者との意見交換を行いました。また、JSMRMおよびISMRM-JPCに関連する今後の国際連携や招待講演についての調整も進めることができました。

脳エネルギー代謝イメージングは現在、「代謝物を見る時代」から、「代謝フラックス・グリア機能・脳ネットワークを統合的に理解する時代」へ移行しつつあるように感じています。この流れは、神経変性疾患、精神疾患、さらには全身ストレスに伴う脳機能障害の理解においても、今後ますます重要な役割を果たしていくと期待されます。

南アフリカは初めて訪れた国ですが、レストランの質の高さに驚きました。ヨーロッパで食べるクオリティが手ごろな価格で大変ありがたかったです。 国の文化についても改めて学ぶ機会もあり、今の自分たちの環境がいかに恵まれているか、痛感しました。自分たちの研究がいくらかでも世界を良くしていけたらいいなと思います。微力ながら頑張りたいと思います。

学会場からホテルに向かう道すがら(道に迷い。。)

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PSPにおけるアストロサイト主導の脳エネルギー代謝異常の解明

Altered astrocyte–neuron crosstalk in progressive supranuclear palsy: Integrated evidence from proteomics and magnetic resonance spectroscopy

上記の論文が、病理学分野のトップジャーナルであるActa Neuropathologicaに受理されました。小野主任研究員が筆頭著者を務めた研究成果です。

本研究では、進行性核上性麻痺(PSP)において、アストロサイトの機能異常が脳エネルギー代謝の破綻および病態形成に深く関与していることを明らかにしました。

プロテオミクス解析、病理学的検討、さらにin vivo磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)を統合することで、アストロサイトと神経細胞の代謝的連関の異常が、脳の脆弱性と密接に関係していることを示しています。

本研究は、広島大学(内田康雄先生)によるプロテオミクス解析、新潟大学脳研究所(清水宏先生・柿田明美先生)からの病理試料提供を含む共同研究として実施され、2022年より進めてきたAMED認知症研究開発事業の成果です。

本研究に先立ち、我々はin vivo MRSを用いてPSP患者におけるアストロサイト反応性の上昇と乳酸増加を報告しました(Hirata et al., Annals of Neurology, 2024)。本研究では、その知見をさらに発展させ、プロテオミクスおよび病理学的解析を統合することで、アストロサイト–神経代謝連関の破綻という機構的理解に到達しました。これらの結果は、アストロサイトの変化がタウ病理に先行しうること、ならびに脳エネルギー代謝異常の初期段階からアストロサイトが病態に関与する可能性を示唆しています。

本研究は、「脳エネルギー代謝ネットワーク」の理解を通じて神経変性疾患の本質に迫る当研究グループの取り組みの一環です。今後も、脳エネルギー代謝と脳機能の関連の解明を目指し、研究を推進してまいります。

AcceptedManuscript
最終版(出版社版)は以下をご参照ください: https://doi.org/10.1007/s00401-026-03020-7

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Baden-Württemberg: Your European Hub for AI and Quantumでの講演

表題のイベントにお招きいただき、日立にて講演を行いました。

産業界からの参加が多く、アカデミアとは異なる視点が求められる場でしたが、自身の研究内容をどのように分かりやすく伝えるかを改めて考える良い機会となりました。

すべてを十分に伝えきれたとは言えない部分もありますが、一部の方には関心を持っていただけた手応えもあり、有意義な機会となりました。

駅から望む海も美しく、良い気分転換にもなりました。

本イベントにお招きいただいたBW_iおよびHITSをはじめとする関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。

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ADPD2026にてポスター発表:神経グリア代謝からみたPSP病態の再考

2026年3月16日から21日にかけてコペンハーゲンで開催されたADPD2026に参加し、ポスター発表を行いました。本学会への参加は今回で2回目となります。

発表演題:
Altered astrocyte–neuron crosstalk in progressive supranuclear palsy: integrated evidence from proteomics and magnetic resonance spectroscopy

ADPDは、アルツハイマー病およびパーキンソン病に関する基礎から臨床までの研究を横断的に扱う国際学会であり、最新の知見を包括的に把握できる機会となりました。本研究グループの発表は比較的専門性の高い領域に属するものでしたが、関連するin vitro研究との共通性も確認され、研究の方向性を再検討する上で有益な示唆が得られました。
本研究は、神経グリア代謝およびエネルギーフローの観点から神経変性疾患の病態理解を再構築する試みであり、今後の展開が期待されます。また、海外研究者との議論や新たな交流を通じて、今後の共同研究の可能性についても有意義な機会となりました。

次回は2027年にバルセロナでの開催が予定されており、引き続き成果発信を行っていく予定です。

 

ADPD2026の夜、コペンハーゲンの街中での夕食後
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認知症のバイオマーカーに関する総説論文がアクセプトされました!

このたび、認知症のバイオマーカーに関する総説論文がアクセプトされました。

The 2024 NIA-AA biological definition of Alzheimer’s disease: linking biomarkers to clinical practice

国立長寿医療研究センターの春日健作先生と共同で執筆いたしました。

アルツハイマー病は、抗アミロイド抗体療法の登場により、その診療のあり方が大きく変わりつつあります。従来は臨床症状に基づく診断が中心でしたが、現在ではバイオマーカーに基づく診断が重要な位置を占めるようになっています。

本総説では、アルツハイマー病のバイオマーカーに関する最新の知見を、実臨床に役立つ形で整理しました。

特にイメージングバイオマーカーの観点から重要なのが、「海馬萎縮」の捉え方です。
かつてはアルツハイマー病の特徴的所見と考えられていた海馬萎縮ですが、現在ではそれ自体が診断の決定的根拠とはならないことが明らかになってきています。本論文では、その背景や考え方の変遷についても詳しく解説しています。

今後の認知症診療におけるイメージングの位置づけを再考する上でも、一つの整理となる総説になったのではないかと思います。ご興味のある方は、ぜひご一読ください(少し長めですが…)。

First authorの小林剛先生は、まだ研修2年目の若手医師です。私たちとともに研究を志し、2025年4月より研究活動に参加されています。膨大な文献を丹念に読み込み、見事にまとめ上げてくださいました。心よりお祝い申し上げます。

私たちは、イメージングを用いて研究と臨床をつなぐトランスレーショナル研究を通じて、医学への貢献を目指しています。将来研究を志す若手医師の皆様、また臨床への応用を目指す基礎研究者の皆様、もしご関心がありましたらぜひご連絡ください。一緒に新しい知見を切り拓いていければ嬉しく思います。

最後に、本研究をご指導くださいました春日健作先生に深く御礼申し上げます。

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Neurovascular Unit 研究会 2026での講演

2026年1月24日に下記の研究会で発表させていただきました。自身の発表への理解を深めるとともに、他の発表から新たな知見を得ることもでき、貴重な機会となりました。

お声がけいただきました正本和人先生、大変ありがとうございました。

NVU研究会 2026
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Alzheimer’s Disease Network Conference From 鎌ヶ谷 での講演

臨床活動の話題です。

東京都健康長寿医療センター脳神経内科の井原涼子先生に特別講演をいただく予定です。

私も少しお話させていただきます。

医療関係者の皆様でご興味がありましたらご欄いただけますと幸いです。

 

 

 

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アルツハイマー病の脳萎縮:診断基準の変遷と最新知見からの再考

アルツハイマー病では海馬の萎縮が脳画像の特徴として考えられてきました。しかし、最近の画像バイオマーカー研究によりその概念は変わりつつあります。今回、アルツハイマー病の診断基準の変遷と、アルツハイマー病の海馬萎縮についてのウェブセミナーの機会をいただきました。

アルツハイマー病の臨床に関わる先生方、画像研究に携わる研究者の皆様のお役に立ちましたら幸いです。

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MRI技術を活用した神経科学研究会

2025年12月16日、表題の研究会(産総研・釣木澤先生主催)にて、病態神経科学研究におけるMRIの活用というタイトルで発表させていただきました。MRイメージングの神経科学研究への応用にはまだ大きな伸びしろがあると思われます。こういった研究会をきっかけに、イメージングが神経科学研究に活用され、両フィールドがさらに発展していくことを期待します。両方の分野をつなげていけるように、今年も一歩ずつ頑張りたいと思います。企画いただいた釣木澤先生、大変ありがとうございました。

追伸

年末あわただしく更新が年を越してしまいました。

皆様、本年もどうぞよろしくお願いいたします!

御殿場の会場近くにあったオブジェ。富士山、鷹、なすび、の縁起物!
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認知症学会での教育講演、アルツハイマー病の診断の変遷と海馬萎縮の意義

先週の11月21日に、第44回日本認知症学会学術集会(大会長:新潟大学脳研究所 池内健教授)にて教育講演をさせていただきました。

ISMRMでの発表内容を改訂した形で、「画像バイオマーカーで読み解く認知症の病態と診療」というタイトルで発表させていただきました。

アルツハイマー病の診断基準の変遷を画像バイオマーカーの観点から、そしてアルツハイマー病における海馬萎縮の病態を画像研究から考察して発表させていただきました。臨床関連の演題を自身で発表させていただくのは10年以上ぶりかもしれません。普段のイメージング・認知症病態研究を振り返る意味で、自分自身にとって大変勉強になりました。

座長を務めていただいた金澤雅人先生、貴重な機会をいただいた大会長 池内健先生、そしてたくさんの演題の中からこの演題を選んでお越しいただいた先生方、大変ありがとうございました。

 

会場の朱鷺メッセ

 

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